遅ればせながら、冊子『本の島へ』の造本を担当させていただいたBEKA(*)より、冊子の紹介をさせていただきます。
冊子『本の島へ』は青山ブックセンター本店で2010年5月16日、6月19日にひらかれた「〈本の島〉をめぐる対話」に向けて制作され、その来場者に配布されました(現在、同店ブックフェア「本の島」コーナーに展示中)。
著者や編集者、装丁家、書店員など、普段はそれぞれ異なった立場で書物に関わる面々が、津田新吾さんの編集した本の中から「わたしの(と)三冊」を挙げています。そうして集まった文章は、書物自体が潜在的に育んできた連なりをあらためて強く感じさせるとともに、ブックフェア「本の島」を航海する際の最良の案内役にもなっています。
■造本にあたって
「ひとつひとつの島は、一冊一冊の本。それぞれの本が個性を失わずに、しかしゆるやかに開かれたかたちで繋がっている、そんな出版活動――」(『本の島へ』より)その「出立」のしるしとしてふさわしい造本を心がけました。全身を輝かせ颯爽と歩く、奄美群島で出会った津田さんを思い出すにつけこの冊子はどうも四角形ではないというように思え、では三角は?と試したら、開いたときにちょうどヨットの帆のような形になることを発見。これは「本の島」へ向かうための乗り物としてもふさわしい、ということで最終的に大小の三角形のページを連ねるようなかたちにたどり着きました。「本」になる少し手前の、1ページ1ページが島であるような野生の書物です。
まず津田さんが世界に捧げた書物の島々=宇宙があり、その島々にさまざまな人が集い、想いを寄せ、冊子『本の島へ』が生まれました。この小さな舟の上であらたに出逢った想い、希いが、風にのり、連なり、しずかにひろがっていったなら、二艘の小舟も幸いです。
*BEKA(ベカ):創作集団。書物でありオブジェでもあるような遊動的書物を製作。主な作品に『奄美自由大学巡礼冊子』、『ル・クレジオ群島周遊冊子/付録・声の羽』、『スイス、ブラジル1924―ブレーズ・サンドラール、詩と友情/付録・旅の葉』など。http://beka.jp