2010年7月5日月曜日

青山ブックセンター本店ブックフェア「本の島」の成り立ちから、現在まで/棚担当者が話す

こんにちは。青山ブックセンター本店のt島です。きょうは、「本の島」フェアをはじめたきっかけなどお話いたします。


昨年秋のことです。同店で働く先輩から、「津田新吾さんという編集者が夏に亡くなられて、〈絵葉書を送る会〉(管啓次郎さん・野崎歓さん・堀江敏幸さんが企画)という集まりがあったんですよ。ABCではイベントなどですごくお世話になってきた人で……」という話を聞きました。

それまで、わたしは津田さんのことはまったく知りませんでしたが、家に帰って青土社の本のあとがきを確認すると、すべて津田さんの編集でした。

はじめて買ったのはジョルジュ・ペレックの『エリス島物語』で、書店で装丁にひと目惚れした記憶が鮮明にあります。他の本もすべてジャケ買いしたものでした。そのとき、津田さんの本を集めて棚をつくったらすごい風景になるんじゃないかと思いついたのです。

早速、今福龍太さんと吉増剛造さんのイベントが決まっていることを理由にして、「オマージュ 津田新吾」フェアの企画を立てました。

しかしこの企画がムクムクと大きくなっていくのはその後です。

津田さんが「本の島」という構想を持っていたと知ったときは、驚きました。六本木店でずっと人文書を担当していた先輩が、「群島 - 世界論」をテーマにした棚に「本の島」というタイトルをつけていたのです。

先輩は、津田さんのことを知らなかった。すごい偶然だと思いました。

「じゃ、先輩のブックリストで、「群島」フェア、津田さん棚の横でやっちゃおう」と考えました。「量が多くなって発注も入れ替えも大変だなあ……」と思いつつ、「こういう偶然がやってきたってことは、きっといい棚になるってことだぞ」という、ふしぎな確信が徐々に強まっていきました。

また、時期を同じくして、水声社の営業さんが新刊の案内にやってきました。ジョルジュ・ペレックの『煙滅』。津田さんは、ペレックの著作をふたつ編集しています。前々から(ペレックの在籍した)言語遊戯集団「ウリポ」のフェア棚をつくりたいと考えていた私は、それらのフェアを並べて大きく展開しようと思いつきました。

おまけに、刊行されたばかりの2冊『本は読めないものだから心配するな』、『エクスタシーの湖』(スティーヴ・エリクソン著)が好評だから、著者の管啓次郎さん、訳者の越川芳明さんも呼んでトークイベントをやってしまおう。本も置こう。

そんなたくさんのめぐり合わせで、20101月中旬より、


5本の棚で4つの文芸書フェア

1. 「ウリポの言語遊戯」

2. 「オマージュ 津田新吾」

3. 「管啓次郎さん、越川芳明さんの棚」

4. 「群島―世界論 本の島」


という大きな棚をつくりました。

「オマージュ 津田新吾」という追悼文集をスキャンして棚で読めるようにし、4つのフェアがつながるように、それぞれの本がなるべく有機的に並ぶよう、下手ながら工夫しました。

(当時の棚紹介ページはこちら)

http://www.aoyamabc.co.jp/12/12_201001/541_2_3_4.html


この棚に、思いのほかたくさんの方が来てくださいました。勝手に写真を撮って(店内は撮影禁止です!笑)ネット上にUPしてくださった方もいます。棚へのお問い合わせもちびちび受けるようになって……。

やがて、〈「本の島」実行委員会〉なるものが生まれ、もろもろの活動が始まりました。

この棚をつくってよかったのは、津田さんの編集した本だけでなく、ほかの本もたくさん置けたことです。

津田さんの手を離れて世に出た本たちが、本そのものの放つオーラで、べつの本を吸い寄せてゆく。

それを形にして、売り場をつくることができる。

書店として実行できる「本の島」のひとつのかたちが、徐々に見えてきました。

棚スケジュールの都合で一旦畳んだこのフェアが、その名もズバリ「本の島――オマージュ 津田新吾」フェアとしてかたちを変えて蘇ったのが、「〈本の島〉をめぐる対話 トークイベント」を控えた5月上旬のことです。「群島 - 世界論」を軸にして、選書を大幅にアレンジしました。

口コミが広がったのか、たくさんの方に来ていただくようになり、(どなたでも自由に書き込める)ノートを設置、おみやげとしてブックリスト「津田新吾さんのつくった本たち」配布も始めました。

2回のトークイベントを経て、このフェア棚から「オマージュ 津田新吾」の看板をはずしました。ファイル「本の島 案内」も設置。

津田さんの仕事を振り返る時期がひと段落して、これからは「本の島」が未来にむかって帆をひろげます。


送り手と読み手をつなぐ場所「本の島」ブックフェアを、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。