2010年6月21日月曜日

寄せられたご感想(6月19日トークショー会場にて)

ABC本店の寺島さんの機転で、当日の会場では通常のイベントアンケートのほかに、「『本の島』へのアンケート」という解答用紙も配布され、5通のご回答をいただきました。
原文のままで転載させていただきます。


何気なく手に取り読んでいた本が、
ここまで全力で向きあって創っておられたのかと
はじめて気づきました。
 これからも読者として、本にかかわっていきたいし、本の島の「石ころ」にでもなれたらと切に思います。  ありがとうございました

*

本日はとても素晴らしいトークイベント、どうもありがとうございました。
前回のvol.1にも参加し、新たな文学作品を出会うことが
できる喜びでいっぱいです。
またぜひこんな会を開催していただきたいです!

*

本日は非常に興味深く聴かせていただけました。ありがとうございました。
堀江さんが強調されていらした「つながり」「島の生成」という
言葉にとても感銘を受けました。メディアをつくることは、
つながりをつくることだと。
津田さんが育てられた「島」。その島を群島として
有キ的につなげていく。この思考のモデルをこれからの
仕事にいかしていきたいと考えました。

*

1回目、2回目を通して聴いていてうなされ
っぱなしでした!
やはり魂の込もった本を作らないとと思いました。
自分の仕事との距離も感じました。「それぞれ」を
荷負うというか、自分の仕事ももっとしないとと思いました。

電子書籍の話も出ましたが、何かが込もった本、
というのは紙でないとできないかなと思っています。
ABCさん、今回のイベントとてもよかったです。
またお願いします。

*

敬語についての質問に対する堀江さんの切りかえしが
みごとだった。
これぞ知性…と大変勉強になりました。


それぞれ感じるところのあるコメントです。
ほんとうにありがとうございました。

わたしがとくに共感を覚えたのは、「自分の仕事との距離も感じました」というお答えです。
このプロジェクトに携わりながら、ひとりの編集者として感じずにはいられないのがまさにその距離だからです。
わたしの場合はもともとの素養も努力も足りないのですが、同じように距離を感じる方も少なくないのではないかと思います。
本をめぐる状況の厳しさが、そこにはあるように感じています。

「かつては(今よりは)自由に本を作れた、でも今はそうではない」という世代と、「もともと自由に作ったことなどない」という世代のあいだで、ひょっとしたら手渡されなかったものがあるのかもしれない、ときどきそんなことも思います。
もちろん、強い信念と努力でもってすばらしい仕事をされている若い編集者はたくさんいますので、安易に「状況」などと語ることは慎むべきなのですが、いまある現実から遊離することなく、その先に「本の島」の未来を描きたいとは思っています。

すこし個人的な語りになってしまいましたが、いただいたご回答をしっかりと受け止めつつ、これからの展開を考えていきます。
これからもご意見ご感想をお待ちしております!

「〈本の島〉をめぐる対話vol.2」開催しました!


6月19日(土)の13時から、「〈本の島〉をめぐる対話vol.2」堀江敏幸さん×前田英樹さん×冨原眞弓さんトクーショーを開催いたしました。
幸いして雨もふらず、前回を上回る多くのお客様にお越しいただきました。

第1弾とあわせて6人の著者の方々にご登場いただきましたが、ひとりの編集者の像が6通りに浮かび上がってくるさまはスリリングでさえありました。
同時に、それでもやっぱり津田新吾なのだな、と思わせる一貫性にも思いを巡らせました。

自ら進行役を買ってでてくださった堀江さんの誠実な話の進め方、冨原さんの痛いくらいに伝わってくる真摯な思い、それらをいくぶん脱臼させながら(?)おおらかに受け止め、時折鋭い視線を過去と未来に投げかける前田さん。
この3人が集まって語り合うことそれ自体がひとつの幸福な事件であり、その場をひとりの人間が用意していたことに打たれます。

とはいえ、打たれてばかりもいられません。
次回以降は、もう少し未来へと歩み出さなければならないだろうと思います。
スケジュールなどはまだ決まっておりませんが、ブログやツイッターも使ってできるだけ生成過程も開いていければと考えています。

皆様からのご意見もいただけましたら、社交辞令などではなく嬉しく思います。
あまりコンセプトの固まっていない「本の島」ですが、ほとんど唯一の方針といえるのが「聞くこと」なのです。

ご来場いただいた方、ご用事があって来られなかった方、いろいろなかたちで「本の島」のことを広めてくださっている方、みなさんにお礼を申し上げます。

2010年6月18日金曜日

明日もまた、「本の島」をめぐる対話


明日19日(土)の13時より、表参道の青山ブックセンター本店で、「本の島」をめぐる対話 vol.2が開催されます。当日参加もOKのようです!

出演は、作家・フランス文学者の堀江敏幸さん、現代思想・言語論をベースに映画・文学・身体など多彩な領域で思索を行う前田英樹さん、シモーヌ・ヴェイユの研究者にしてトーベ・ヤンソンの翻訳者である冨原眞弓さん。いずれも、編集者の故・津田新吾さんと本作りの仕事を一緒にされ、深く知的な交流をつづけてきた方々。

管啓次郎さん(詩人・比較文学者)、鄭暎惠さん(社会学)、野崎歓さん(エッセイスト・翻訳家)の登場したvol.1に引き続き、今回も「超豪華メンバー」が一堂に会します。このめったにない機会を、ぜひお見逃しなく! ご予約、お問合せはこちら

対話 vol.1では、出演者のみならず、フロアからの反応や会場の雰囲気にとても熱いものがありました。文芸評論家・フランス文学者で、サッカー批評でも知られる陣野俊史さんほか、編集者、書店員、大学の先生などなど、本に関心のあるいろいろな立場の方々からの応答があり、客席どうしであらたな「対話」がはじまったりして、大きな笑いにつつまれる一幕も。会場には、文筆家の大竹昭子さん、作家の姜信子さんの姿もあり、心あたたまるコメントをいただきました。

青山ブックセンター本店では、関連するブックフェア本の島 オマージュ——津田新吾」が開催中です。これまで人文書や文芸書のブックフェアというと、著者や訳者の名前が大きく取り上げられることが多かったと思います。

けれども今回は、「本の島」というブックレーベルを構想したひとりの「編集者」の仕事とヴィジョンを通じて書店に棚を作り、そのことによって、どのような魅力的な本の世界がみえてくるのかを問うこころみになっています。青山ブックセンターの文芸書担当で当フェアの仕掛人、寺島さんによるブックセレクトの妙をお楽しみ下さい。棚の内容はすこしずつ変わっていますから、何度でも!

口コミ、ブログ、twitterなどを通じて、「本の島」というプロジェクトの波紋がゆっくりゆっくり広がっているようです。これだけ多くのみなさんに関心をもっていただけるのは、津田新吾さんが「越境者」だったからではないでしょうか? 出版文化のなかでの既存の役割や境界を、意志をもって軽々と越える旅人。そんな気がします。

2010年6月14日月曜日

twitter をはじめました

「本の島」、twitter をはじめました。

http://twitter.com/honnoshima

当サイトのサイドバーにある、twitter 公式バナーからも、どうぞ。
読み物や分量が長めの情報はブログに、速報的なお知らせや短信は twitter に随時掲載します。
目印は、ジュゴン。よろしくお願いいたします!

2010年6月5日土曜日

本の島をめぐる対話 vol.2 堀江敏幸×前田英樹×冨原眞弓トークイベント

予約受付中!

2010619日(土)13:00~(開場1230~)

青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山

定員:120名様


入場料:700(税込)

ご予約、お問合せはこちら

惜しくも昨年逝去した編集者・津田新吾により作り出された本の世界=本の島 について、ゆかりの深い著者たちが語り合うトークイベントの第二弾です。かつて存在した「島々」を巡る言葉と言葉のあわいから、未来へと開かれたあたらしい「島々」の像がぼんやりと浮かび上がる、そんなスリリングな現場にぜひお立ち会いください。


◉プロフィール

堀江敏幸 (ほりえ としゆき)
1964年岐阜県生まれ、作家、フランス文学者。早稲田大学教授。著書に『郊外へ』、『熊の敷石』、『回送電車』、『雪沼とその周辺』、『河岸忘日抄』、『未見坂』、『正弦曲線』など。訳書にエルヴェ・ギベール『赤い帽子の男』『幻のイマージュ』、ジャック・レダ『パリの廃墟』、ジェラール・フランカン『つきへでかけたおんなのこ』、フィリップ・ソレルス『神秘のモーツァルト』などがある。津田新吾の手がけた本は『おぱらばん』(三島由紀夫賞)、『魔法の石板 ジョルジュ・ペロスの方へ』の二冊。



前田英樹 (まえだ ひでき)
1951年大阪府生まれ。立教大学現代心理学部教授。フランス思想、言語論の精緻な読みを基礎として、映画、絵画、文学などから時間や記憶についての考察を続ける。著書に『沈黙するソシュール』、『小津安二郎の家 持続と浸透』、『在るものの魅惑』、『倫理という力』、『独学の精神』など。訳書にフェルディナン・ド・ソシュール『ソシュール講義録注解』、アンリ・ベルクソン『記憶と生』など。津田新吾の手がけた本は『映画=イマージュの秘蹟』、『セザンヌ 画家のメチエ』、『言葉と在るものの声』、甲野善紀との共著『剣の思想』の四冊。




冨原眞弓 (とみはら まゆみ)1954年兵庫県生まれ。聖心女子大学哲学科教授。専門はシモーヌ・ヴェイユなどフランス哲学・思想であるが、トーヴェ・ヤンソン作品のスウェーデン語からの翻訳や作品研究にも携わる。著書に『シモーヌ・ヴェイユ』、『ムーミンを読む』、『ムーミン谷のひみつ』など。訳書にシモーヌ・ヴェイユ『カイエ 3』、『カイエ 4』、『ヴェイユの言葉』(編訳)、『自由と社会的抑圧』、『根をもつこと』、カリン・ボイエ『カロカイン 国家と密告の自白剤』、『トーベ・ヤンソン・コレクション』全八巻、トーベ・ヤンソン『島暮らしの記録』など。津田新吾の手がけた本は『シモーヌ・ヴェイユ 力の寓話』、『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界 ムーミントロールの誕生』の二冊。

2010年6月2日水曜日

「本の島」の書棚 編集者・津田新吾の仕事

文芸書・人文書の編集者・津田新吾さんがどのような本を世に送りだしたのか。現時点でわたしたちが把握しているタイトル一覧です。ここにある本の島々から、もっと広い世界へ! 

リストにある本の多くは、青山ブックセンター本店で開催中のブックフェア「本の島——オマージュ 津田新吾」のコーナーで実際にご覧いただけます。ぜひ、お店のほうに足をお運び下さい。

***

*津田新吾さんが青土社で編集を手がけられた本

吉増剛造『花火の家の入口で』1995

吉増剛造『燃えあがる映画小屋』2001

管啓次郎『コヨーテ読書――翻訳・放浪・批評2003

堀江敏幸『おぱらばん』1998*第12回三島由紀夫賞受賞

堀江敏幸『魔法の石板――ジョルジュ・ペロスの方へ2003

野崎歓『ジャン・ルノワール 越境する映画』2001*第23回サントリー学芸賞受賞

野崎歓『香港映画の街角』2005

野崎歓『赤ちゃん教育』2005*第22回講談社エッセイ賞受賞

ジャン・ルノワール『ジョルジュ大尉の手帳』野崎歓訳1996

ジャン・ルノワール『イギリス人の犯罪』野崎歓訳1997

ジャン・ルノワール『ジャン・ルノワール エッセイ集成』野崎歓訳1999

前田英樹『映画=イマージュの秘蹟』(1996

前田英樹『セザンヌ 画家のメチエ』2000

甲野善紀・前田英樹『剣の思想』2001

前田英樹『言葉と在るものの声』2007

冨原眞弓『シモーヌ・ヴェイユ 力の寓話』2000

冨原眞弓『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界――ムーミントロールの誕生』2009

田中純『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』2001*第24回サントリー学芸賞受賞

田中純『死者たちの都市へ』2004

小池寿子『描かれた身体』2002

若桑みどり『聖母像の到来』2008

須賀敦子『時のかけらたち』1998

須賀敦子『イタリアの詩人たち』1998

多和田葉子『容疑者の夜行列車』2002*第14回伊藤整文学賞・第39回谷崎潤一郎賞受賞

多和田葉子『アメリカ――非道の大陸2006

アントニオ・タブッキ『夢のなかの夢』和田忠彦訳(1994

アントニオ・タブッキ『島とクジラと女をめぐる断片』須賀敦子訳(1995

アントニオ・タブッキ『ベアト・アンジェリコの翼あるもの』古賀弘人訳1996

アントニオ・タブッキ『フェルナンド・ペソア最後の三日間』和田忠彦訳1997

アントニオ・タブッキ『黒い天使』堤康徳訳1998

パスカル・キニャール『アルブキウス』高橋啓訳1995

パスカル・キニャール『音楽への憎しみ』高橋啓訳1997

パスカル・キニャール『舌の先まで出かかった名前』高橋啓訳1998

パスカル・キニャール『辺境の館』高橋啓訳1999

パスカル・キニャール『アプロネニア・アウィティアの柘植の板』高橋啓訳2000

パスカル・キニャール『ローマのテラス』高橋啓訳2001

パスカル・キニャール『さまよえる影』高橋啓訳2003

フェデリーコ・フェッリーニ『魂のジュリエッタ』柱本元彦訳1994

G・カブレラ=インファンテ『煙に巻かれて』若島正訳2006

鹿島茂『子供より古書が大事と思いたい』1996*第12回講談社エッセイ賞受賞

鹿島茂『『パサージュ論』熟読玩味』1996

ロミ『乳房の神話学』高遠弘美訳(1997

マヌエル・プイグ『グレタ・ガルボの眼』堤康徳訳1999

谷昌親『詩人とボクサー――アルチュール・クラヴァン伝2002

永沢哲『野生の哲学――野口晴哉の生命宇宙2001

アルフォンソ・リンギス『信頼』岩本正恵訳2006

川村湊『海を渡った日本語――植民地の「国語」の時間』1994

アブデルケビール・ハティビ『マグレブ 複数文化のトポス――ハティビ評論集』澤田直編訳、福田育弘訳2004

ジョルジュ・ペレック『エリス島物語――移民たちの彷徨と希望』酒詰治男訳2000

ディディエ・デナンクス『カニバル(食人種)』高橋啓訳2003

マリオ・リゴーニ・ステルン『テンレの物語』飯田煕男訳1998

アレッサンドロ・G・ジェレヴィーニ『ファザーランド』2005

ウーク・チャング『キムチ』岩津航訳2007

マルタン・パージュ『僕はどうやってバカになったか』大野朗子訳2003

ドミニク・ノゲーズ『人生を完全にダメにするための11のレッスン』高遠弘美訳、青土社(2005

『入澤康夫〈詩〉集成』上・下(1996*第39回毎日芸術賞受賞

キース・ヴィンセント+風間孝+河口和也『ゲイ・スタディーズ』1997

タイモン・スクリーチ『江戸の思考空間』村山和裕訳(1998

上野千鶴子『ナショナリズムとジェンダー』(1998

アルデン・T・ヴォーン+ヴァージニア・メーソン・ヴォーン『キャリバンの文化史』本橋哲也訳(1999

ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル――フェミニズムとアイデンティティの攪乱』竹村和子訳1999

ジュディス・バトラー『アンティゴネーの主張――問い直される親族関係』竹村和子訳2002

ピエール・クロソウスキー『生きた貨幣』兼子正勝訳(2000

浅田彰『20世紀文化の臨界』2000

多田智満子『動物の宇宙誌』(2000

丸川哲史『台湾、ポストコロニアルの身体』2000

丸川哲史『帝国の亡霊――日本文学の精神地図』2004

末延芳晴荷風とニューヨーク』青土社2002

陣野俊史『フットボール都市論――スタジアムの文化闘争』(2002

四方田犬彦『アジア映画の大衆的想像力』(2003

東ゆみこ『クソマルの神話学』2003

末延芳晴『夏目金之助 ロンドンに狂せり』2004

平野嘉彦『マゾッホという思想』2004

永渕康之『バリ・宗教・国家――ヒンドゥーの制度化をたどる』2007

デイヴィッド・ライアン『監視社会』河村一郎訳、青土社(2002

叢書*西洋中世綺譚集成

ティルベリのゲルウァシウス『皇帝の閑暇』池上俊一訳1997

クードレット『メリュジーヌ物語――母と開拓者としてのメリュジーヌ』松村剛訳1996

ギラルドゥス・カンブレンシス『アイルランド地誌』有光秀行訳1996

シリーズ現代思想ガイドブック

B・アシュクロフト + P・アルワリア『エドワード・サイード』大橋洋一訳2005

S・モートン『ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク』本橋哲也訳2005

S・サリー『ジュディス・バトラー』竹村和子他訳2005

T・マイヤーズ『スラヴォイ・ジジェク』村山敏勝他訳2005

J・プロクター『スチュアート・ホール』小笠原博毅訳2006

C・コールブロック『ジル・ドゥルーズ』國分功一郎訳2006

RJ・レイン『ジャン・ボードリヤール』塚原史訳2006

G・アレン『ロラン・バルト』原宏之訳2006

T・クラーク『マルティン・ハイデガー』高田珠樹訳2006

S・ミルズ『ミシェル・フーコー』酒井隆史訳2006

L・スピンクス『フリードリヒ・ニーチェ』大貫敦子・三島憲一訳2006

N・ロイル『ジャック・デリダ』田崎英明訳2006

*書肆風の薔薇/水声社で手がけられた本

福田孝『源氏物語のディスクール』(1990

クラウディオ・マグリス『オーストリア文学とハプスブルク神話』鈴木隆雄・藤井忠・村山雅人訳(1990

アレホ・カルペンティエル『光の世紀』杉浦勉訳(1990

フアン・ルルフォ『燃える平原』杉山晃訳(1990

ウェイン・C・ブース『フィクションの修辞学』米本弘一他訳(1991

ジェラール・ジュネット『ミモロジック――言語的模倣論またはクラテュロスのもとへの旅』花輪光監訳(1991

ジェラール・ジュネット『フィギュールⅠ』花輪光訳(1991

安原顯『カルチャー・スクラップ』(1992

ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』酒詰治男訳(1992